89回国家試験 PM31-60

次の文を読み午後問題31~33に答えよ。
75歳の女性。長男夫婦と同居している。2年前に痴呆と診断され、自宅で生活していたが部屋の隅で失禁することが頻繁になり、家族の希望で療養型の病院に入院した。家族の話によると「1か月前からおもらしが激しく、家ではおむつを使っていたが、それでも失敗し畳を濡らすことが多かった」という。入院時、当てていたおむつをいじっているので看護婦が「トイレに行きたいのですか」と尋ねても明確な返事ができないようであった。入院した翌日の朝、看護婦は部屋の隅にしゃがみこんで排尿しているのを見かけた。声をかけるとズボンをあげて黙って立ち去った。当てていたおむつが床に落ちていたが、濡れてはいなかった。

午後問題31 排尿パターンを把握するために記録表を作ることになった。
観察項目で優先度が低いのはどれか。
1.1日の排尿の回数
2.排尿した時刻
3.尿失禁の有無
4.1回の尿量

午後問題32 排尿の記録表を参考にして排尿を誘導することになった。
排尿前の患者の観察で優先度が低いのはどれか。
1.言葉による尿意の表出
2.排尿前の挙動
3.スムーズな衣類の着脱
4.トイレの場所の見当識

午後問題33 病棟カンファレンスが開かれて対策が検討された。
対処方法で誤っているのはどれか。
1.トイレの入口に大きく 便所 と表示する。
2.消灯後もトイレは点灯しておく。
3.部屋の隅を整理して清潔に保つ。
4.おむつをはずせないよう工夫する。

状況ライン

次の文を読み午後問題34~36に答えよ。
小学3年生の女子。一人っ子であり、内気で寂しがり屋である。4日前の早朝、顔面の浮腫に気付いた。尿量は平常時の約半量となり、3日前から咳嗽が出現し、翌日には腹痛と嘔吐とを訴えたため近医を受診した。尿検査の結果、専門病院を紹介され本日入院した。入院時の所見は、呼吸数30/分。脈拍数120/分。血圧110/70mmHg。検査の結果、尿蛋白1.0g/dl、血清総蛋白3.5g/dl、総コレステロール321mg/dl、尿素窒素27mg/dl、CRP0.3mg/dlであり、特発性ネフローゼ症候群と診断された。プレドニゾロン2mg/kg/日の薬物療法、床上安静および食事療法が開始された。

午後問題34 入院時のアセスメントで最も重要な所見はどれか。
1.呼吸器症状
2.消化器症状
3.低蛋白血症
4.高脂血症

午後問題35 4週後、浮腫が消失するとともに活気が出て食欲が亢進してきた。母親は3日前から少し風邪気味である。
この時点の看護で適切なのはどれか。
1.床上安静は続ける。
2.塩分制限は続ける。
3.食事量は制限しない。
4.母親の面会は禁止する。

午後問題36 入院から2か月、順調に回復し、プレドニゾロンも減量されて退院することになった。主治医は学校に提出する腎臓病管理指導表の区分にBと記載した。
退院指導で正しいのはどれか。
1.しばらく登校しない。
2.体育の授業で軽い運動まではしてよい。
3.体育の授業で強い運動まではしてよい。
4.体育の授業に加えてスポーツ系のクラブ活動もしてよい。

状況ライン

次の文を読み午後問題37~39に答えよ。
2歳の男児。父親25歳、母親22歳、妹1歳の4人暮らし。生後3か月にファロー四徴症と診断された。生後6か月から明らかなチアノーゼ、ばち指および無酸素発作が出現した。フェノバルビタールおよびβ遮断薬による薬物療法を続けていたが、無酸素発作が頻発するようになった。姑息的手段としての短絡手術の目的で本日10時に入院した。入院時、妹の世話を頼む人がいなかったので、母親が妹を乗せた乳母車を押し、父親が男児を抱いていた。男児は父親の首にしっかりしがみつき、非常に緊張し、警戒した表情で看護婦を見つめている。

午後問題37 入院時の体重測定で正しいのはどれか。
1.泣いてもよいから単独で体重計に乗せて測定する。
2.父親が抱いて測定した値から父親の体重を引く。
3.両親に最近の体重を聞いて記録する。
4.子どもが病棟に慣れてから測定する。

午後問題38 入院当日、何度か父親が子どもをベッドに移そうとしたり看護婦が代わりに抱こうとしたが、そのたびにおびえて泣き出しそうになるので、ずっと父親が抱いたままでいる。父親が面会終了時刻の午後8時に「子どもが慣れるまで泊まりたいのですがお願いできますか」と看護婦に尋ねた。病院では原則として付き添いを認めていない。
父親への対応として最も適切なのはどれか。
1.「医師に確認します」
2.「付き添えるように準備します」
3.「病院の規則で付き添えません」
4.「面会室に泊って下さい」

午後問題39 入院翌日の早朝、覚醒時に無酸素発作を起こして意識が消失した。
この時点の看護で最初に行うのはどれか。
1.心臓マッサージをする。
2.酸素吸入をする。
3.膝胸位にする。
4.強心薬注射の準備をする。

状況ライン

次の文を読み午後問題40~42に答えよ。
7歳の男子。両親と3歳の妹との4人暮らし。4か月前に小学校に入学したが、その2か月後、発熱と貧血とを主訴に受診し入院した。Hb7.5g/dl、白血球5,000/mm3、血小板4万/mm3で検査の結果、急性リンパ性白血病と診断された。寛解導入療法と地固め療法とを受けるために、約5か月の入院が必要であると担当医から説明があった。寛解導入療法が開始され、顆粒球が500/mm3以下になったので抗真菌薬(アムホテリシンB)も処方された。

午後問題40 この時の抗真菌薬の与薬方法で誤っているのはどれか。
1.点滴静脈内注射
2.内 服
3.吸 入
4.うがい

午後問題41 入院2か月現在、寛解導入療法が終了して完全寛解を得た。入院以 来、母親は妹を田舎の祖母にあずけて毎日朝10時から夜8時までの面会を続けてきた。子どもには脱毛がみられているが、全身状態は良好である。両親は子どもの発病のショックから立ち直りつつあり、白血病に関する情報を求めている。
両親への助言で適切でないのはどれか。
1.障害児福祉手当の制度を紹介する。
2.小児がんの子どもを持つ親の自助グループを紹介する。
3.妹の精神的ケアが必要であることを説明する。
4.訪問教育の制度があることを紹介する。

午後問題42 現時点での子どもへの援助で適切でないのはどれか。
1.外泊の機会をつくる。
2.学校の先生に面会に来てもらう。
3.同級生との面会を勧める。
4.頭髪は必ず生えてくると説明する。

状況ライン

次の文を読み午後問題43~45に答えよ。
18歳の女子。高校生。両親と妹の4人暮らし。身長162cm。体重48kg。初経後ほぼ28日周期で月経が発来し、月経時、下腹部痛が強いときには市販の鎮痛薬を服用している。半年前に両親がコンビニエンスストアを始めたために家事を任されるようになったころから月経が不順になった。また、大学生の友人と3か月前から性交渉をもっている。今月は月経が開始予定日から2週遅れており、心配になって受診した。「受験勉強もあるのに両親も妹も私に頼りっぱなしで毎日いらいらしている」と話している。

午後問題43 月経が遅れていることと関連が少ないのはどれか。
1.月経随伴症状
2.性交渉の時期
3.避妊の有無
4.日常生活の変化

午後問題44 妊娠の可能性も考えられたため診察が行われた。
この時期の妊娠を診断するのに適切でないのはどれか。
1.免疫学的妊娠反応の確認
2.超音波断層法による胎嚢の確認
3.超音波ドップラー法による児心音の確認
4.内診による妊娠性変化の確認

午後問題45 診察の結果、妊娠はしておらず、基礎体温を測定しながら月経周期を観察していくことになった。「月経が遅れて心配した。でも彼が好き。避妊の方法を知りたい」と話している。
指導で適切なのはどれか。
a.基礎体温は起床後すぐに排尿をすませてから測定する。
b.基礎体温が高温期に入れば避妊の必要はない。
c.経口避妊薬は医師の処方で服用できる。
d.コンドームは性感染症予防に有効である。
1.a、b   2.a、d   3.b、c   4.c、d

状況ライン

次の文を読み午後問題46~48に答えよ。
31歳の初産婦。妊娠経過は順調であり、妊娠40週3日に3,100gの女児を正常分娩した。出血量は480ml、産褥3日、体温37.3℃、脈拍68/分。子宮底長10cm、硬く触れ、血性悪露がみられている。会陰切開縫合部の発赤・腫脹は軽減したが、体動時の牽引痛は続いている。乳房は軽度の熱感と緊満とがみられ、乳頭はやや発赤している。乳管は左右とも5~6本開通し、1回哺乳量は15~25gである。昨日の朝から母児同室となった。今朝は顔色がやや不良で「夜間2時間おきに授乳やおむつ交換をするので睡眠不足。これから先も大変そう」と疲れた様子で話す。

午後問題46 産褥3日のアセスメントで適切なのはどれか。
1.子宮復古は順調である。
2.外陰血腫の可能性がある。
3.乳腺炎の可能性がある。
4.乳汁分泌は不足している。

午後問題47 母親への説明で適切なのはどれか。
1.外陰部は陰唇を開いてよく洗う。
2.36℃台に解熱するまで母乳は与えない。
3.夜間は新生児をあずけることができる。
4.水分摂取を控える。

午後問題48 生後3日の新生児は体重2,850g、血清総ビリルビン13.5mg/dl。おむつ交換をしていた母親が「おむつに血がついていた。皮膚もカサカサしているし大丈夫でしょうか」と心配そうに看護婦に聞いている。
新生児のアセスメントで適切なのはどれか。
a.生理的体重減少の範囲内である。
b.生理的黄疸の範囲を超えている。
c.アトピー性皮膚炎である。
d.母体から移行したホルモンが影響する出血である。
1.a、b   2.a、d   3.b、c   4.c、d

状況ライン

次の文を読み午後問題49~51に答えよ。
26歳の初妊婦。妊娠36週2日。身長160cm。体重57kg(非妊時体重50kg)。全前置胎盤のため妊娠33週から入院しており、妊娠37週に入ったら帝王切開術を行うことになっている。今朝の診察で下肢の浮腫はなく、体温36.9℃。脈拍数76/分。血圧128/74mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。Hb12.0g/dl。胎児心拍数130bpm。子宮底長33cm。第1頭位。「昨夜はいつもよりお腹が張って何度も目が覚めた。便は2日間出ていない」と訴えている。

午後問題49 今朝の情報で最も重要なのはどれか。
1.母体のバイタルサイン
2.腹部緊満感の程度
3.排便回数
4.胎児心拍数

午後問題50 この日の夕方、帝王切開術により、2,700gの女児を出産した。手術は順調に終了した。母児ともに異常はない。術後1日「こんなに傷が痛いとは思わなかった」と訴えている。
母乳栄養の確立への援助で適切なのはどれか。
1.創痛が消失するまで乳房ケアは控える。
2.乳房ケアのみ行い授乳は延期する。
3.短時間の授乳を開始する。
4.母児同室とする。

午後問題51 術後4日、手術後の経過は順調である。朝の授乳時「急に手術になって驚いた。思ったより傷は大きいし予想外のことが多かったが、あの胎盤の位置では自然分娩は無理だったし、元気な娘が生まれたので良かったと思う。傷が痛くて授乳が大変だけれど、吸うのは上手で30g飲んでくれた」と話している。
アセスメントで正しいのはどれか。
1.今後、経腟分娩はできない。
2.子どもへの愛着形成は不十分である。
3.出産に対するわだかまりは少ない。
4.育児行動の習得は遅れている。

状況ライン

次の文を読み午後問題52~54に答えよ。
20歳の女性。一人っ子として育った。気分にむらがあり、同性の友人はほとんどいない。9歳のときに両親が離婚して以来、母親と2人で暮らしている。最近、気分がふさぎ大学も欠席しがちである。寂しさを紛らわすために、何人もの男性と交際するが長続きしない。ある時は交際相手を極端に理想化したかと思うと、突然何の価値もない人のように感じてしまうのだという。空しさから多量に飲酒したり、過食や嘔吐を繰り返している。これまでも再三、酩酊状態で手首を切って自殺を図り、救急病院を受診していた。今回、救急医から精神科受診を勧められ、入院となった。

午後問題52 状態のアセスメントにあたって重要度が低い情報はどれか。
1.家族関係
2.自殺未遂歴
3.性格傾向
4.飲酒量

午後問題53 患者が自殺をほのめかした場合の対応で適切なのはどれか。
1.自殺以外の話題に変える。
2.生命の大切さを説く。
3.絶望感を理解する。
4.決断は先に延ばすよう勧める。

午後問題54 援助の長期的な目標で優先度が低いのはどれか。
1.問題解決能力を高める。
2.規則的な食習慣を身につける。
3.安定した対人関係を築く。
4.衝動性をコントロールできる。

状況ライン

次の文を読み午後問題55~57に答えよ。
65歳の男性。妻と会社員の娘との3人暮らし。41年間、技術者として週末も休まず働いていた会社を2年前に定年退職した。退職と同時に社宅のアパートから庭つきの一軒家に引っ越した。以前は付き合いで飲む程度であった酒を、退職後は朝から飲み続け、1日中1人でテレビの前で過ごしている。酒だけは自分で買いにいく。3か月前にふらつくようになったので近所の内科医院を受診し、糖尿病と肝機能障害とを指摘された。断酒を勧められたが実行できずにいる。見かねた妻とともに専門外来を受診し、アルコール依存症と診断された。

午後問題55 問題を引き起こしている状況のアセスメントで適切なのはどれか。
a.家族と向き合えない。
b.退職後の生きがいを見出せない。
c.老化を受容できない。
d.父親としての権威を失った。
1.a、b   2.a、d   3.b、c   4.c、d

午後問題56 当分の間、アルコール依存症の治療を受けることになった。妻は「夫にどう対応してよいかわからない」と言っている。
妻への助言で適切なのはどれか。
1.小遣いを渡さない。
2.家にある酒類はすべて捨てる。
3.自宅の庭の手入れを任せる。
4.娘から飲酒の害を伝えてもらう。

午後問題57 患者と家族に対する支援プログラムで適切でないのはどれか。
1.心理教育(家族グループ)
2.断酒会
3.デイケア
4.老人クラブ

状況ライン

次の文を読み午後問題58~60に答えよ。
精神科病棟の病室から怒鳴り声が聞こえてきたので看護婦が駆け付けると、ベッドの側でAさん(26歳の男性。精神分裂病)が身体をこわばらせながら立っていた。同室の患者は、遠巻きにしながら様子を見ていた。部屋の雰囲気から、壁に向かって大声を出していたらしいことを察した看護婦は、同室の患者に気を配りながらAさんに近づき、「何かあったのですか」と声をかけた。Aさんは頭を壁にぶつけながら「また僕をバカにしやがって」と言った。

午後問題58 Aさんの状態で最も可能性が高いのはどれか。
1.ストレスを発散していた。
2.同室の患者とけんかをして興奮していた。
3.幻聴に悩まされていた。
4.過去の悔しい体験を思い出していた。

午後問題59 この場面での観察で優先度が低いのはどれか。
1.興奮の程度
2.自傷行為の程度
3.身だしなみ
4.同室の患者への影響

午後問題60 看護婦の対応で適切なのはどれか。
1.同室の患者に何が起こったのか詳しく聞く。
2.ベッドに腰掛けるようAさんを促し寄り添う。
3.ナースステーションに来るようAさんに伝える。
4.Aさんを刺激しないようその場から立ち去る。

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